インビザラインでの矯正治療は、歯が理想的な位置に移動し終えたら治療終了ではありません。矯正治療後は必ず後戻りのリスクがあるため、保定が必要になります。 様々な保定装置がありますが、インビザラインには専用のビベラリテーナーというものが存在します。
矯正治療後の歯の後戻りはなぜ起こるか
後戻りとは、インビザラインでの矯正治療終了後に治療前の不正な咬合状態に向かうことです。後戻りの要因としては以下のものがあります。
軟組織
歯の位置や歯列の状態は、口腔周囲筋の力の均衡によって保たれています。インビザラインでの矯正治療による歯の移動は、軟組織の均衡を変化させることになり、後戻りの原因となります。
咬合
インビザラインによる矯正治療によって適正な咬合関係が得られない場合、咬合力が歯を不正な位置に移動させる力として作用することがあります。
顎顔面と咬合の成長
インビザラインでの矯正治療後に顎顔面が成長した場合、歯列は成長を補償するように変化し、歯並びが乱れることがあります。
支持組織
インビザラインでの矯正治療によって動いた歯には、歯槽骨の吸収、添加、歯根膜、歯肉繊維の変化が伴います。
これらの支持組織は、歯が動いた位置で固定されるには長時間を要し、固定される前に矯正力から解き放たれると、固定される前の位置に戻ろうとする力が働き、後戻りの要因となります。
保定とは
保定とは矯正治療によって目的の位置に移動させた歯を、目的の位置で保持し安定化させることです。矯正治療終了後、理想的な位置に歯を動かせたとしても、先に述べた理由で後戻りの可能性があります。
保定するために使う装置を保定装置やリテーナーといい、インビザラインにおいては専用のビベラリテーナーがあります。
リテーナーは歯を動かす矯正治療とは異なり、装着していてもほとんど痛みを感じません。
インビザラインでの矯正治療終了後の最初の1年間くらいは後戻りしやすいため、セルフケアやお食事の時以外はリテーナーを装着した方が良いです。支持組織や移動後の咬合関係の固定が完成したら、リテーナーの装着時間を徐々に減らしていきます。
リテーナーはとても薄いため、落下、歯ぎしり、食いしばり等で破損することがあります。軽度の破損はそのまま使用しても問題はありませんが、中程度から重度の破損に関しては基本的には再作製となります。
ビベラリテーナーとは
ビベラリテーナーはインビザライン専用のリテーナーで、矯正治療終了後の歯列に対して印象(型取り)をして作成する方法と、インビザラインと同じくクリンチェックのデータから作製する方法があります。 ビベラリテーナーの上顎用には「U」の文字が、下顎には「L」の文字が印字されていて、患者識別番号も記載されています。 ビベラリテーナーは上顎用からでも、下顎用からでもどちらから装着しても問題ありません。 インビザラインの矯正用のマウスピースと同じく、可綴式(取り外し可能)で、目立ちにくく、透明なマウスピースタイプのものです。ただし、ビベラリテーナーを装着する際に、咬んで装着しようとすると無理な力がかかり、ビベラリテーナーの破損につながるため注意が必要です。装着するときは手指で優しく左右均等に力がかかるように装着します。 ビベラリテーナーを取り外した後は水洗いで洗浄し、必要であれば歯ブラシで軽くこすります。余分な水気を除去し、使用しないのであればすぐにケースに保管します。お湯で洗うと変形するため必ず水で洗浄します。 ビベラリテーナーは1回に3セットのリテーナーが提供され、3か月ごとに新しいビベラリテーナーに交換していきます。 価格は医院によって異なりますが、3セットで数万円が相場です。舌側線をはじめとする、他の保定装置とも併用可能です。また、ホームホワイトニング用のマウスピースや歯ぎしり用のマウスピース、フッ素塗布のカスタムトレーとしても使用することができます。
ビベラリテーナーと他のリテーナーとの違い
舌側線のワイヤー固定だと保定効果は高いですが、舌側線が第一小臼歯までの固定になってしまうため、大臼歯の保持が不完全で後戻りの可能性があります。また、デンタルフロスを通すことが難しいです。
対してビベラリテーナーは大臼歯まで保定でき、可綴式で清掃性も良いです。また唇側線が付与されたプレートタイプのリテーナーも保定効果は高いですが、唇側線が変形すると保定効果が低下します。
唇側線の変形が患者さん自身で認識することが難しいため、破損や損傷の度合いが目で見てわかるビベラリテーナーの方が優れているといえます。
ビベラリテーナー自体の欠点としては可綴式のため、装着していないと保定効果が発揮されないため、効果が患者さんに委ねられてしまうということです。