20年以上も生きていれば誰にでもその人なりの癖はあるものですが、もしかするとその癖は「歯並びを悪化させる悪習慣」かもしれません。歯並びや噛み合わせは、お口の環境や生活習慣によって徐々に変わっていきます。この変化は、数ヶ月から数年かけてゆっくりと進むため、あなた自身も気づかないうちに「歯並び悪化」の道をたどっているかもしれないのです。
歯並びが崩れる原因は虫歯や歯周病だけではない
虫歯や歯周病で歯を失った場合、その状態を放置していると、徐々に両側の歯が倒れてきて歯並びや噛み合わせが崩れていきます。防ぐには入れ歯やブリッジ、インプラントなどを使って支えを作らなくてはいけません。
しかし、歯並びが崩れる原因は他にも存在し、日常生活に潜んでいる場合もあります。自分では気づきにくいものもありますので、ぜひこの機会にチェックして、当てはまるものがあれば早めの改善を心がけましょう。
日常生活に隠れている歯並びが崩れる5つの要因
歯並びの崩れにつながる癖や行動をご紹介します。あなたが普段どのような生活を送っているかを思い出して、一つ一つチェックしていきましょう。
1. 頬杖や猫背などの姿勢の癖
頬杖は、下顎の位置を無理やり変える行為であり、お口周りの筋肉や顎関節に大きな負担をかけます。安定して噛める位置が分からなくなると、噛み合わせが崩れて徐々に歯並びにも影響します。
噛み合わせの崩れは使用する筋肉の負担の差にもつながるため、それが原因でお顔の見た目が左右非対称になるケースも少なくありません。
また、姿勢の癖では「猫背」にも注意が必要です。
下顎は顎関節に引っ掛かった状態でぶら下がっており、筋肉の力によって上下左右に動きます。 背筋を真っすぐにして座り、リラックスしながらお口を少しだけ開けた状態は、もっとも負担がかからない位置とされており、専門的には「安静位」といいます。猫背の場合はいくら気持ちがリラックスしていても下顎が前にズレてしまうため、安静位には含まれません。噛む位置が変わることから、噛み合わせや歯並びの崩れを引き起こすリスクは高いといえるでしょう。
2. 偏食やよく噛まないなどの食事習慣
食事習慣は歯並びや噛み合わせに影響を与えやすく、デコボコの歯並びが昔よりも増えた原因は食文化の変化ともいわれています。
よく噛んで食べることは脳を活性化するために良いといわれているのですが、メリットはそれだけではありません。歯を支える組織の成長にも役立っており、歯ごたえのあるものを噛む回数が多ければそれだけ顎が成長しやすくなります。
反対に柔らかいものばかりを食べていると、組織に伝わる刺激が少ないことで、顎の発育不全を引き起こす場合があります。歯が並ぶスペースが不足して歯が重なって生えるリスクが高くなるため、注意が必要です。
また、よく噛まずに飲み込む行為は歯並びや噛み合わせへの悪影響だけでなく、胃腸の負担を増やして栄養の吸収率を下げてしまいます。食事の際には30回以上噛むことや、飲み物で流し込まないようにするなど、ご自身で意識的なルールを決めて習慣づけることをおすすめします。
3. うつ伏せ寝や歯ぎしりなどの睡眠習慣
うつ伏せ寝は頬杖と同じように下顎がズレた状態が続くため、噛む位置が不安定になる傾向にあります。
また、就寝中におこる歯ぎしりは体重のおよそ2倍もの力が歯や顎関節にかかることがあります。その状態が長く続けば続くほど歯並びや噛み合わせの崩れにつながってしまうのです。神経を取った歯は欠けたり割れたりする可能性が高いため、お口の中にある場合は特に注意しなければいけません。
歯ぎしりの習慣がある場合は、ナイトガードと呼ばれる専用のマウスピースを使用して歯や顎関節へのダメージを予防してみてはいかがでしょうか。
4. 口呼吸や舌が正しい位置にないなどのお口周りの癖
空気の動きによって歯に圧がかかる口呼吸は、出っ歯や受け口などを引き起こす可能性があります。1回や2回では何も変化はおこりませんが、常に圧がかかっている状態を続けると歯並び悪化のリスクが高まるため、十分に注意しなければいけません。お口の中が乾燥し唾液量が少なくなることで、虫歯や歯周病のリスクが上がり、それが歯並びや噛み合わせの崩れにつながる場合もあります。
また、唇を噛んだり、舌を前に押し出したりなど口周りの癖がある場合も、前歯が外側に出やすいため、やはり注意が必要です。
お口周りの癖を改善しなければ、たとえ矯正治療で歯をキレイに整えたとしても再び崩れる可能性があることから、トレーニングを並行してすすめる場合もあります。
5. 喫煙習慣
タバコには有害物質が多く含まれていますが、特に歯ぐきに対するダメージが大きいとされています。喫煙によってお口の中の血流が悪くなると、歯ぐきを健康に保つうえで欠かせない酸素や栄養素が届きにくくなり、歯周病を引き起こす可能性が考えられます。重症化して歯がグラつくと歯並びの崩れにつながるため、歯列矯正の専門家の立場から申し上げると、「喫煙習慣」自体を見直していただきたいというのが本音です。
ニコチン中毒になるとストレスがたまりやすくなり、食いしばりや歯ぎしりにもつながります。その結果、歯や顎関節に余計な負担がかかって歯並びの崩れがおこるケースも珍しくありません。歯並びや噛み合わせの悪化を防ぐことはもちろんですが、全身の健康のためにも、ぜひ禁煙にトライしてみてください。