親知らずを抜歯したことが原因で顎の骨が小さくなることはほとんどありません。エラが張っている方や頬骨が大きく出ている方は、親知らずの抜歯による小顔効果があると言われることもありますが、医学的な根拠はありません。エラの部分に相当する下顎骨は、親知らずが生えている部分とは離れているため、抜歯の影響は極めて軽微です。
親知らずを抜歯した後、歯が生えていた部分の骨が退縮することはありますが、フェイスラインに影響を与えるほどの変化にはなりません。ただし、親知らずの抜歯によって噛み合わせが変わり、肥大していた咬筋が小さくなるなどの間接的な影響は出る可能性があります。また、親知らずが原因で歯肉や歯槽骨に炎症が生じていた場合、抜歯と治療によって腫れが治まり、小顔になったように見えることがあります。この場合、元々小顔だった人が親知らずの炎症によって腫れていただけであり、親知らずの抜歯によって小顔になったわけではありません。
顔の大きさやフェイスラインは骨格の成長によってほとんど決まっているため、親知らずの抜歯で大きく変化する可能性は低いです。親知らずを抜歯すること自体には多くのメリットがありますが、問題がない親知らずを小顔目的で抜歯することにはデメリットがあります。親知らずは抜歯しなくてよい場合もあり、親知らずを残すことにもメリットがあるため、抜歯するかどうかは正しい知識をもとに慎重に検討することが重要です。
親知らずとは
親知らずは医学的には智歯や第三大臼歯と呼ばれ、18~20歳頃に生えてくる3番目の奥歯です。親知らずは28本の歯が生え揃い、骨格の成長が止まった後に生えてくるため、他の歯を押しのけて不規則な生え方になることがあります。親知らずが傾いて生えたり、歯肉に埋まっていたりすることで周囲の組織が炎症を起こす智歯周囲炎が発生し、口腔内に悪影響を与える場合には抜歯が必要です。顎の骨が小さい小顔の方では、親知らずが生えるスペースが少ないため、不規則な生え方になったり、親知らずが生えてこないことがあります。
親知らずを抜歯するメリット
親知らずが原因で口腔内に問題が生じる前に、予防的に抜歯することにはいくつかのメリットがあります。小顔効果は期待できなくても、口腔の健康維持には有効な治療方法です。以下に親知らずの抜歯による主なメリットを解説します。
むし歯や歯周病予防につながる
親知らずは口腔内の一番奥に生えるため歯磨きがしづらく、歯科治療もしにくいため、むし歯や歯周病になりやすいです。親知らずと隣接する第二大臼歯との隙間もケアしにくくなるため、第二大臼歯を守るために予防的に抜歯するケースがあります。特に親知らずが半分以上歯肉に埋まっていたり、傾いて第二大臼歯の奥に隠れている場合には、食べ物が詰まりやすく、むし歯や歯周病のリスクが高くなります。歯磨きがしづらい・歯間ブラシが入れにくい場合は、むし歯になる前に抜歯を検討しましょう。
口腔内の炎症を抑える
親知らずが傾いたり横向きに生えたりすると、歯肉を傷つけて智歯周囲炎を引き起こします。智歯周囲炎の症状は慢性的な痛みや出血で、出血した場合には細菌感染を生じることもあります。親知らず周辺で増殖した細菌が口腔内の他の部位に悪影響を与えたり、血管から体内に侵入することもあります。慢性的な歯茎の炎症や腫れがある場合には、親知らずの抜歯によって再発のリスクを軽減できます。
口臭予防につながる
歯磨きがしづらい親知らずの周辺には歯垢がたまり、口臭の原因となります。口臭の主な原因は歯垢そのものではなく、歯垢を餌に増殖する細菌の老廃物です。細菌が増殖すると歯周病につながり、細菌の出す老廃物によって口臭も悪化します。口臭は自分よりも周りの人に与える不快感が大きく、コミュニケーションに問題を生じることもあります。口臭予防には毎日の歯磨きが重要ですが、歯磨きがしづらい親知らずがある場合は抜歯が根本的な治療方法になります。
顎関節症の予防になる
親知らずが原因で噛み合わせが悪くなると、顎に負担がかかり顎関節症になることがあります。横向きに生えてくる親知らずに第二大臼歯が押されて歯並びが乱れたり、親知らずのせいで噛みづらく片側だけで噛む癖がつくと、顎関節に過剰な負担がかかります。顎関節症は放置すると重症化し、食事や会話が難しくなりますので、親知らずが原因で噛み合わせに問題がある場合には早めの抜歯を検討しましょう。