せっかく矯正治療を受けてきれいな歯並びを手に入れても、その後少しずつ元の状態に戻ってしまうことがあります。これを「後戻り」と呼びます。
矯正治療には、大きく分けて2つの期間があります。ひとつは、歯を動かして歯並びを整える「矯正期間」、もうひとつは整えた歯並びを維持する「保定期間」です。矯正装置を装着するのは矯正期間であり、その後、リテーナー(保定装置)を使用して歯の位置を固定するのが保定期間となります。
特に部分矯正では前歯だけを動かすため、「それほど動かしていないのに、なぜ後戻りが起こるのか?」と疑問に思う方もいるかもしれません。しかし、歯は本来あった位置に戻ろうとする力が働くため、何も対策をしないと歯列が乱れ、後戻りが起こるのです。
部分矯正で起こりやすい後戻りの原因
部分矯正では、以下のような理由で後戻りが起こりやすくなります。
1. 保定装置を正しく使用しなかった
矯正治療後は、歯の位置を安定させるためにリテーナーを装着する必要があります。リテーナーには取り外し可能なマウスピースタイプと、前歯の裏側に固定するワイヤータイプがあります。
取り外し可能なリテーナーは、決められた時間装着しないと効果が得られません。装着時間を守らなかったり、リテーナーを紛失・破損したまま放置したりすると、歯が元の位置に戻ってしまう可能性が高まります。
2. 舌癖や歯ぎしりの影響
舌で前歯を押す癖があると、出っ歯や受け口の原因になります。矯正後もこの癖が残っていると、再び歯並びが崩れるリスクがあります。
また、歯ぎしりや食いしばりの習慣があると、強い力が歯にかかり、歯の位置がずれてしまいます。これらの習慣を改善しない限り、後戻りが発生しやすくなります。
3. 親知らずによる圧迫
親知らずは多くの場合、周囲の歯を押しながら生えてきます。そのため、矯正治療後に親知らずが生えてくると、歯列が乱れる原因になります。
特に、親知らずが傾いて生えてくると、他の歯を押し出して歯並びが崩れることがあります。矯正後の後戻りを防ぐために、必要に応じて親知らずの抜歯を検討することも大切です。
4. 部分矯正では対応しきれないケースだった
部分矯正では、前歯の両サイドを少し削ってスペースを作ることで歯を移動させます。しかし、スペースが十分でない場合や、出っ歯や受け口の程度が重い場合は、部分矯正では理想的な歯並びを維持するのが難しくなります。
無理に部分矯正で治療を行うと、最初は歯並びがきれいに見えても、時間の経過とともに歯列が乱れたり、出っ歯が悪化したりすることがあります。そのため、矯正前の診断がとても重要になります。
まとめ
矯正治療後の後戻りは、適切な保定を行わなかったり、舌癖や歯ぎしりなどの習慣が残っていたりすることで起こります。また、親知らずの影響や、部分矯正では対応しきれないケースも後戻りの原因になります。
後戻りを防ぐためには、リテーナーの装着をしっかり行い、悪習慣を改善することが重要です。さらに、矯正前に適切な治療計画を立てることで、より安定した歯並びを維持しやすくなります。
矯正治療後も、定期的に歯科医師のチェックを受けながら、きれいな歯並びをキープしましょう。