犬歯は永久歯のひとつです
犬の犬歯が特徴的に発達しているのでこうよばれるようになりました。永久歯はその形から切歯や臼歯に分けることができます。切歯とは犬歯の前側にある前歯のことで、2種類あります。臼歯は、いわゆる奥歯のことで、親知らずを除けば小臼歯と大臼歯が2種類ずつあります。
1種類しかないのは犬歯だけです。その犬歯にはどのような役割があるのでしょうか。そして、犬歯を失うとどうなるのでしょうか。
犬歯ってなに?
犬歯は、前から数えて3番目に位置する菱形の形をした永久歯です。乳歯の場合は乳犬歯といいます。ヒトの場合、犬歯までが前歯に含まれます。犬歯は、他の永久歯と比べて歯根がとても長いという特徴があります。歯根が長いということは頑丈であるということでもあり、実際他の歯と比べて寿命が長い歯でもあります。
犬歯の役割
下顎は、頭蓋骨とくっついているわけではありません。下顎骨は頭蓋骨から筋肉や靭帯でぶら下がっているだけです。下顎はとても不安定な存在なのです。そんな不安定な下顎の位置を定めるのに役立っているのが犬歯だといわれています。犬歯は、前歯と奥歯の境界付近にあります。犬歯が噛み合わせの目印となって、下顎の位置を定めていると考えられています。下顎の位置が定まることで、顎も正しく動かすことが出来るようになっています。
犬歯を抜歯するとどうなるの
犬歯には噛み合わせや下顎の位置を定める役割があります。そのため犬歯がなくなると、噛み合わせの位置が定まらなくなります。その結果下顎の位置が不安定になります。下顎の位置が安定しなければ、それに伴い顎の動きも安定しなくなります。犬歯はとても歯根が長く太い歯です。その歯が無くなると、歯茎が落ち込んだようにくぼみます。犬歯は前歯の一つですから、その部分の歯茎が無くなると外見に大きく影響します。
犬歯を抜歯しなくてはならなくなる原因について
むし歯
犬歯も他の歯と同じくむし歯になります。小さな虫歯であれば、コンポジットレジンと呼ばれるプラスチック製の詰め物を詰めたり、少し大きい虫歯なら神経を取って被せたりすることで治せます。しかし、歯根しか残らないような大きな虫歯になると抜歯することになります。
歯周病
歯周病は、歯周組織という歯を支えているところに生じる病気です。歯周病になると、まず歯茎が炎症を起こしてはれてくる歯肉炎をおこします。そして、更に進行していきますと、歯茎の下にある歯槽骨という歯を支えている骨が溶かされてくる歯周炎になります。
犬歯は最も歯根が長い歯ですので、骨に埋まっている部分も大きいです。歯周炎になって少々犬歯の周囲の骨が減ってきてもしっかりしているのですが、それにも限度はあります。犬歯がグラグラするほどに歯槽骨が減ってしまうこともあり、その場合は、他の歯と同じくやはり抜歯しなくてはならなくなります。
破折
外傷などにより歯が破折してしまうことがあります。破折による歯のひび割れの程度によっては、抜歯しなければならないこともあります。
犬歯を失った場合の治療法
犬歯を失うと前歯を失うわけですから、外見に影響します。しかも、犬歯が担っていた噛み合わせや下顎の位置決めができなくなるので、顎の動きが不安定になってしまいます。犬歯がないままの状態にしておくことは、勧められません。保険診療でも犬歯を失った場合の治療法がカバーされています。ブリッジと部分入れ歯です。
ブリッジ
ブリッジとは固定式の人工歯のことです。後述する部分入れ歯と異なり、取り外して洗わなければならないといった手間がかかりません。部分入れ歯と比べてコンパクトに作ることが出来るので違和感も少ないというメリットもあります。
その反面、ブリッジを装着するためには喪失した歯の隣の歯を削らなくてはなりません。削られた歯はしみたり痛みを生じたりする可能性があります。削ったところからむし歯が生じるリスクもあります。通常、喪失した歯が1本だけの場合は、喪失歯の両隣の歯を1本ずつ削ればブリッジをつくることができます。しかし、犬歯の場合は異なります。たとえ1本だけの喪失であっても、犬歯の前側2本と犬歯の後側1本の合計3本の歯を削らなければブリッジを装着することが出来ません。
ブリッジは削って被せた歯を使って噛み合わせの力を負担する構造です。被せた歯には、本来その歯にかかっていた噛み合わせの力以上の力がかかるようになります。長期的にみれば、力の負担に耐えられない場合、歯根が割れてしまうこともあります。ブリッジには、このようなデメリットがあります。
部分入れ歯
部分入れ歯は取り外し式の人工歯です。部分入れ歯の場合は金具を使って装着します。ブリッジと異なり装着するために歯を削る必要がありません。ブリッジの人工歯部は外せないので、歯みがきが難しいことがあるのですが、部分入れ歯は取り外し式ですから外せば歯みがきが容易になります。障害があったりして歯みがきがしにくい場合でも、手入れがしやすいです。ブリッジのように隣の歯を使う必要がないので、隣の歯が歯周病などで弱っていても他の歯に金具をかけることで装着することが可能になります。部分入れ歯にはこのようなメリットがあります。
一方、部分入れ歯はブリッジよりも大きいので違和感が大きいです。食事の度に裏側に食べ物が入り込むので外して洗わなければならないという手間もかかります。これは部分入れ歯のデメリットといえます。犬歯の喪失に対して、部分入れ歯を作ることは可能です。ただし、それほど強く噛ませることはできません。しっかり噛ませるようにすると部分入れ歯が壊れてしまうことがあるからです。
犬歯にインプラントをするメリット
周囲の歯を守れる
犬歯は、下顎の位置を決める役割を担っています。そのためにかかってくる強い力に耐えるために頑丈になっています。犬歯が喪失した場合にブリッジを装着することがありますが、その場合ブリッジの支えとなる歯に、犬歯が受け止めていた力がかかってきます。その力に耐えられなければ、支えとした歯が折れたり、ぐらついて抜けたりすることがあります。インプラントにすれば、ブリッジのように周囲の歯に力がかかってくることがありません。したがって、犬歯の周囲の歯を守ることができます。
隣の歯を削らなくてもいい
ブリッジの場合は、支えとする歯を削らなければ装着することができません。インプラントであれば、隣の歯を削る必要がありません。削ることによって生じる、歯がしみたり、むし歯になりやすくなるリスクを避けることができます。
目立ちにくい
犬歯は前歯の一つですから、外見に大いに影響します。治療するなら自然な仕上がりにしたいところです。ブリッジは表側は白いレジンというプラスチックで覆うことで目立ちにくくしていますが、内側が金属なので、角度によっては銀色の部分が見えてしまいます。しかも、レジンは経年的に黄色くなるという性質を持っています。
部分入れ歯の場合は、入れ歯を引っ掛けている金具がどうしても見えてしまいます。インプラントであれば、金属も見えませんし金具も使いません。セラミックで作られたインプラントの歯は、本物と見間違うほどの自然な仕上がりになりますので、非常にきれいで目立ちにくく治療することができます。